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ベージュの絨毯

夜勤明けで家に帰って
薬を飲んで寝た
夜に起きて
薬を飲んでまた寝た

夢を見た

若いころの自分と
若いころの友だち何人か
ベージュの絨毯が敷かれた部屋でだらだらしている
蛍光灯がついている
昼か夜かわからない

ふと気づくと
となりの女ともだちは猫だった
つやつやした銀の毛並み
体を動かすと
風が稲穂をわたるように
光の沢が美しい

ふかふかした腹に
顔をうずめて抱きついた

拒まれるかと畏れたが
彼女がふうと息をして
むしろちからを抜いたので
すっかり気をよくしてますますもぐりこんだ

ほかの女ともだちの声がした
「好きになっとるの?」

猫のともだちが言った
「好きになってきたわ」

僕はいよいよ気をよくして
「もうだめや、なんもできへん」


すると猫のともだちは
「だめやない、しっかりしなさい」


その途端、僕はひとりになって
ごうごう移り変わる景色に浮かんだ
神社の長い階段
河川敷のシロツメクサ
あの交差点のケヤキの並木
学生食堂の唐揚げ冷麺

そしてあのベージュの絨毯の部屋で
女ともだちがひとり
プロジェクタを壁に投射して映画を観ていた
女ともだちは
もう猫ではなかった

映画の中では
白いTシャツのやせた少年が
左の肩に唐草模様のストラップをかけて
うつむいている
あれはギターを弾いているらしい

少年は僕のように見えたが
僕ではなかった


そのまま夢がさめるにまかせた

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