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Zabadak "桜"

Sakura

発表からもうすぐ二十年とは、なかなか信じがたい思いがする。
史上稀にみる名盤であり、傑作だと思う。
惜しむらくは、知るひとが少ないことだ。

吉良知彦と上野洋子のデュオとしてのザバダックは、
このアルバムで最後になった。

十の曲が収録されている。
吉良さんが六曲、上野さんが三曲を作っている。
あと一曲は古い民謡だ。
そして上野さんが六曲、吉良さんが三曲を歌っている。
あと一曲は歌詞が無い。

二人の優れた音楽家が、
アルバム一枚とおして、ぎりぎりのところでぶつかっている。
そして、相手が書いた曲の中で
もう一方が記名性を帯びた演奏をするとき、
クリエイティブな奇跡が起きている。

本当に希有な瞬間が、
琥珀のようにレコードに封じられたのだと思う。
その希有な組み合わせが
もう失われてしまったのは残念でならないが、
もうこれ以上は本当に無理だったのだろう、とも感じられる。

『五つの橋』や『休まない翼』、
そして『Tin Waltz』を、
鉱物を眺めるみたいにして、僕はしげしげと一生聴くと思う。

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