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August 2012

臆病な男の話と歌

Pocket_garden


田中相の『地上はポケットの中の庭』の表題作は
とても臆病な男の話で、
まあだいたい男というのはおしなべて臆病なものだから、
つまるところ男全般についての話といえる。

老人の自宅の庭に子や孫が集まり、彼の誕生パーティーをしている。
老人は誕生席で自分の人生を追憶しながら
『出会えば別れる』
『始まれば終わる』
『すべては終わる』
などと考えて不機嫌だが、
妻の産んだ子、子の産んだ孫を見るうちに
『なぜか不思議と悪くない』と思う。

たったそれだけといえばそうだが、
キュートで、余韻があり、共感を誘う。


ビリー・ジョエルのAnd so it goesを思い出した。

In every heart there is a room
A sanctuary safe and strong
To heal the wounds from lovers past
Until a new one comes along

I spoke to you in cautious tones
You answered me with no pretense
And still I feel I said too much
My silence is my self defense

And every time I've held a rose
It seems I only felt the thorns
And so it goes, and so it goes
And so will you soon I suppose

But if my silence made you leave
Then that would be my worst mistake
So I will share this room with you
And you can have this heart to break

And this is why my eyes are closed
It's just as well for all I've seen
And so it goes, and so it goes
And you're the only one who knows

So I would choose to be with you
That's if the choice were mine to make
But you can make decisions too
And you can have this heart to break

And so it goes, and so it goes
And you're the only one who knows

みんなこころに部屋を持っている
誰にも見せない秘密の場所
去った恋人の傷が
新しく癒やされるまで そこですごす

おずおずときみに話しかけた
きみは全然取り繕わない
それでも僕は しゃべりすぎたと感じる
沈黙は 自分を護るため

薔薇を手にするたび
棘だけを感じた
そうして時は過ぎる
きみだって じきにいなくなるだろう

でも僕の沈黙で きみが去るなら
それほどの過ちはほかにない
だからこの部屋に きみを入れるよ
僕のこころ 壊したっていいんだよ

だから僕は目を閉じているんだ
いままでのこと すべて見るために
そうして時は過ぎる
知っているひとは もうきみだけだ

きみと一緒にいることを選ぼう
僕が選んでいいのなら
でもきみにだって 決める権利はある
僕のこころ 壊したっていいんだよ

そうして時は過ぎる
知っているひとは もうきみだけだ


Billy Joel "And so it goes"

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Img_0101

小田急線下北沢駅の
新宿行きホームの中ほどに立つと、
線路を挟んだ向こうにある。
本当のところ、壁ではなくて橋脚だ。
上を井の頭線が走っている。

もう十年以上、この壁を毎日のように見ている。
井の頭線を下車して、小田急線ホームへ階段を降りる。
降りたら左へ曲がって、新宿寄りにすこし歩く。
壁のところで立ち止まり、壁と向き合い、壁を見る。

きたないが、僕は好きだ。
街の歴史が描かれた絵のようだ。
しみのどれかひとつが、自分のように思える。
あの中に自分もいる。

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